裏磐梯の紅葉ガイド

一年のうち最も裏磐梯がにぎやかになる紅葉シーズン。
中津川渓谷や曽原湖、デコ平…ext、裏磐梯には紅葉の名所といわれる所が数多くあります。
天気や気温、日照など様々な条件がかかわるため、見ごろの予想が難しい紅葉ですが、
多くの方がなるべく楽しめるように、また時期を外してしまっても裏磐梯を楽しめるように、
今回は大容量で裏磐梯の「紅葉」と「秋」をご紹介します!

目次

裏磐梯の紅葉時期

一口に裏磐梯の紅葉と言っても、裏磐梯の「どこで」紅葉を見るかによって、ねらい目の時期が違ってきます。
裏磐梯周辺は、磐梯山(1816m)や西吾妻山(2035m)の山頂~五色沼湖沼群(約800m)と標高に大きな差があります。
更に猪苗代町(約520m)や喜多方市(約200m)まで下れば、紅葉の時期はさらに違ってきます。

また、前述の通り、紅葉はその年の日照時間、日中及び夜間の気温など複数の要因で色づきますので、同じ場所でも、紅葉の時期は年ごとに大きく変化します。
条件によっては紅葉せずに葉を落としてしまう。紅葉しても数日たたずに葉を落としてしまう。という事もありますので、予めご了承下さい。

2023年9月 紅葉予想2023 (クリックで紅葉予想PDFが開きます)

例年のおおよその紅葉予想です。
山頂周辺(1,600m~)は10月の上旬~中旬
観光道路(1,200m付近)は10月の中旬~下旬
裏磐梯高原(800m付近)は10月の下旬~11月上旬
というのが例年の通りです。

昨年(2023年)の紅葉
昨年の五色沼湖沼群 柳沼(標高800m付近)の紅葉をまとめてみました。時期の参考にしてください。



撮影:2023年10月23日



撮影:2023年10月25日



撮影:2023年10月30日



撮影:2023年11月1日

そもそも紅葉って?

少し、本題からはそれますが、そもそも「なぜ植物は紅葉するのか」について軽く解説したいと思います!

植物が紅葉するのは葉の中の物質が変化するためです。
植物は光合成をおこなうため、「クロロフィル」という化学物質をつかって光エネルギーを吸収します。このクロロフィルは赤色青色の光をよく吸収するため、余った緑色が目立ちます。
多くの植物の葉などが緑色をしているのは、このクロロフィルのせいです。

クロロフィルが吸収した光エネルギーは二酸化炭素から栄養を取り出す装置を動かすのに使われますが、冬が近づき寒くなると、この装置の効率はとても落ちてしまいます。
すると吸収される光エネルギーが過剰になり、やがては植物の体を傷つけてしまいます。
これを防ぐため、植物はクロロフィルを分解します。クロロフィルが分解されることで、葉の緑色は薄まります。

緑色が薄くなった葉は、残った物質の色になります。
植物の種類にもよりますが、「カロテノイド」という物質の黄色や「タンニン」という物質の茶色が目立つことが多いようです。
イチョウなどが黄葉するのは、このカロテノイドのせいです。

また、寒くなった際に光エネルギーの吸収を弱めるため、クロロフィルの分解に先立ち、「アントシアニン」という化学物質を作る植物もいます。
アントシアニンは緑色青色の光をよく吸収するため、余った赤色が目立ちます。
クロロフィルはアントシアニンに吸収されなかった赤色の光を吸収しますが、そのうち分解され、葉には赤色をしたアントシアニンだけが残ります。
カエデなどが紅葉するのは、このアントシアニンのせいです。


紅葉・黄葉する樹

ムクロジ科 (Sapindaceae)
カエデやトチノキの仲間です。


イロハモミジ(撮影:2021年10月29日 毘沙門沼)


ハウチワカエデ(撮影:2021年10月14日 グランデコ山頂駅)


イタヤカエデ(撮影:2013年10月25日 五色沼自然探勝路)
黄葉する木です。


ヒトツバカエデ(撮影:2023年10月29日 五色沼自然探勝路)
黄葉する木です。カエデっぽくない葉っぱが特徴。

バラ科 (Rosaceae)
サクラやイチゴなどの仲間です。


オオヤマザクラ(撮影:2013年10月25日 裏磐梯ビジターセンターサテライト)


ナナカマド(撮影:2015年10月9日 毘沙門沼周辺)

ウルシ科 (Anacardiaceae)
ウルシの仲間です。触れるとかぶれることがあります、綺麗だからといって触らないように。


ツタウルシ(撮影:2022年10月8日 レンゲ沼周辺)
早い時期に紅葉します。森林の緑とのコントラストが綺麗。


ヤマウルシ(撮影:2021年10月16日 デコ平湿原周辺)

そのほかの仲間


カラマツ(マツ科)(撮影:2021年10月29日 毘沙門沼)
黄葉する木です。日本産の針葉樹では唯一落葉する樹です。


カツラ(カツラ科)(撮影:2024年10月14日 裏磐梯物産館駐車場)
近づくと甘い香りがします。ほかの木より黄葉・落葉が早いです。

裏磐梯紅葉の名所

山頂周辺(標高1600m~)


磐梯山山頂(撮影:2019年9月29日)
こがね色の田んぼが見事です。



西吾妻山・西大巓(撮影:2016年9月25日)
チングルマなどの高山植物の紅葉も見ることができます。

観光道路周辺(標高1200m付近)


デコ平(撮影:2017年10月13日)


磐梯山ゴールドライン(撮影:2016年10月18日)

裏磐梯高原(標高800m付近)




中津川渓谷(撮影:2022年10月27日・下2枚2020年10月28日)


五色沼自然探勝路(撮影:2017年10月26日)


曽原湖(撮影:2023年10月26日)


曲沢沼(撮影:2022年10月27日)

裏磐梯以外の近隣名所

浄土平
裏磐梯から車で1時間ほど。標高が高いので裏磐梯より紅葉は早めです。詳しくは

安達太良山
こちらも裏磐梯から車で1時間ほど。詳しくは

土津神社
裏磐梯から車で20分ほど。詳しくは

長床
裏磐梯から車で45分ほど。詳しくは

紅葉以外の「秋」の楽しみ方

きのこウォッチング
秋といえばキノコのシーズン!食用か毒かの話になりがちのきのこですが、見た目もなかなか面白いものぞろいです。
見るだけなら、国立公園や天然記念物などの採取禁止のエリアではないか、毒かどうかなど気にしなくても良いですので初心者の方にもおすすめです。

ロクショウグサレキン(撮影:2017年10月14日 早稲沢・デコ平探勝路)

きのみ探し
実りの秋は探勝路上に様々な木の実や落ち葉が落ちています。
落ちている木の実がどこから来たのか、どんな種類か、調べてみるのも楽しいです。

ブナの実(撮影:2021年10月18日 曾原湖畔探勝路)
中身はありませんでした。動物が食べたのでしょうか…?

紅葉シーズン&その後の注意点

シーズン中の交通状況
紅葉のシーズンには全国からたくさんの方が訪れます。道路・駐車場は大変混雑しますので、お時間に余裕をもって安全運転でお越しください。

危険な動植物
豊かな自然が魅力の裏磐梯ですが、自然には人にとって危険な側面もあります。
・裏磐梯はツキノワグマやイノシシ等の大型哺乳類の生息地です。散策の際はクマ鈴等で音を出しながら歩きましょう。
・スズメバチが活発になるシーズンです。見かけた際は刺激しないように。
・本編でも取り上げたウルシの仲間が多く生育する地域です。かぶれる可能性がありますので触らないように。

気候について
・裏磐梯は標高も緯度も高い位置にありますので、気温の低い場所になります。思ったよりも寒かった…とならないよう、余分に一枚上着があると安心です。
・山の中腹になりますので、天気の急変がしばしば起こります。散策中に雨に降られてもいいよう、ポンチョなど手の空く雨具をお持ちになるのをお勧めします。
・11月後半になると、雪が降ったり、路面凍結するおそれもあります。事前に天気予報をご確認のうえ、お車でお越しの方はスタッドレスタイヤ等のご利用もご検討ください。

秋の森を彩る紅葉は、だれしもが楽しめる自然観察の初めの一歩です。
紅葉を見ているさなかの、どんな木が紅葉しているのか?この木の別の時期はどんな姿をしているのか?この木にはどんな生き物が住んでいるのか?など
湧き上がる疑問を大切にしてください。
また疑問の解決にはビジターセンターがきっと役に立つと思いますので、裏磐梯をお越しの際にはぜひともお立ち寄りください!

参考&過去の情報のリンク集

●裏磐梯ビジターセンターHP
秋のみどころ
2016年10月21日 各地の紅葉情報

●参考文献
浅田浩二.“みんなのひろば 植物Q&A”.一般社団法人日本植物生理学会.2005-09-26.リンク.
福岡県 環境部 自然環境課 野生生物係.“生物多様性情報総合プラットフォーム福岡生きものステーション”.リンク.2024-10-05確認.

◇自然解説員 なかじま◇

前の記事

裏磐梯生き物図鑑(10月)