2016年9月25日 西吾妻山登山道
9月25日日曜日、グランデコのゴンドラを利用して西大巓・西吾妻山登山をしてきました。ビジターセンター正午の外気温は22.3℃で天候晴れの日でした。
このコースは裏磐梯にある23のトレッキングコースのうちでも本格的な登山コースですので、十分な装備、特に防水性の登山靴やトレッキングシューズ、セパレートの高機能レインウエアのほか、気温差に対応できるウエア、登山ザック、十分な飲料水や食料等の準備、天候の見極めや情報収集を怠りなくしたうえで、チャレンジしてください。
また、中高年の方はストックを利用すると助かるかもしれません。ただストックにたより過ぎ重心をかけすぎると、肝心の足の方が滑ることもあります。あくまで自分の二本足でしっかり歩くのが基本で、バランスを崩したときにストックを活用する位が良いと思います。
さてゴンドラを利用すると、登り始めの標高はすでに1390mです。これから標高差650mを往復する登山となります。登り始めはしばらくスキー場のゲレンデ内につけられた道を進みます。(↓)
登り始めてすぐに気づいたのですが、火山の中腹にある登山道は、火山灰が風化してできた赤土が多いものですが、ここは、いきなり岩だらけの路、ゲレンデはなだらかであっても、道は岩だらけ。しかも火山ガスの逃げた穴がたくさん開いている溶岩だらけの道です。(↓)
30分ほど登ると道は樹林帯のなかを進むようになりますが、道は依然として溶岩の岩だらけ。そこに木の根が縦横に露出している道になります。(↓)
どうしてこんなに岩ばかりの道なの? と、考えますと思い当たることがありました。吾妻山は、西吾妻も中吾妻も東吾妻も、ほとんど全山が、火山活動により多量の溶岩が地表を流れて山になってできた、日本では珍しい巨大な火山群なのでした。ハワイの巨大火山をほうふつとさせるような。(昔はこうした火山をアスピーテ型と呼んでいました。)
たしかに、西大巓の山頂が近づいてくると、隣の西吾妻山、そのまた隣の中吾妻山の稜線が南に高度を下げていく様子が、まるで巨大なすべり台のようです。溶岩流による地形です。末端部はやや急傾斜になって止まります。(↓)
なるほど岩だらけ、溶岩だらけに合点がいきました。
足元に目をやり見えてくる植物たちは、いずれも一年の大きな仕事を終え、冬を迎える準備中という感じでした。見上げるアオモリトドマツやコメツガの高木は、あと3か月もすれば樹氷をまとうことでしょう。
(カニコウモリの種子↓)
(ゴゼンタチバナの実↓)
さて分厚い安山岩の溶岩流に包まれ、地質も地形も樹木相も一様で、景観に変化のない登山道も、頂上を迎えると一変します。すばらしい展望が待っているのです。
西大巓の山頂(1981m)からは、猪苗代湖、秋元湖、小野川湖、桧原湖、雄国沼が全部見えるのです。広い会津盆地も見えます。『磐梯五湖』とでも名付けたくなる、豪華なパノラマでした。(↓)
さて山頂に露出していた岩には、溶岩が画面の右下方向に流れたことを示す流理構造が見え、うすい溶岩と溶岩の間には、数センチから10センチぐらいの安山岩のレキがたくさん挟まっています。(↓)このレキはマグマのしぶきの様なものが固まったもので、山頂付近に溶岩の噴出口があったことを示しています。
眼を西に向けると、檜原湖北部が間近に見えました。糠塚島、明治大学セミナーハウス(旧桧原小中学校校舎)も見えました! 背後の特徴的な山は1443mの高曽根山です。(↓)
山頂を後に、今度は吾妻連峰最高峰の西吾妻山に向います。鞍部の南側
(写真の右側)は、遅くまで雪田となり、その後6月中旬~7月は見事なお花畑
となるところです。(↓)
木道を進み、湿原に入ると、まるで秘密の大名庭園に紛れ込んだような見事な景色で、湿原は草紅葉の季節を迎え、青空に映えます。(↓)
さて湿原の内部構造の見える場所がありました。
湿原植物の下の部分は、黒い土のようですが、実はこれ、土ではありません。植物の遺体が低温多湿のため、分解されず、炭素分だけが泥炭(ピート)として残ったものです。少し手に取ってみるとマッチ一本で火が付きそうな状況。スコットランドでは、これを燃してスコッチウィスキーに香り付けをするそうです。(↓)
最高峰の西吾妻山(2035m)は、アオモリトドマツの森で視界が利きませんが、ちょっと下ったところからは西吾妻小屋方面が見えました。標高2000mのハイランドの美しい風景です。(↓)
下山はまた西大巓を経由してデコ平へ下りましたが、途中、不思議な光景に出合いました。ミヤマリンドウの何輪かの咲き残りのすぐ脇にオヤマリンドウが立ち枯れていたのです。(↓)
ミヤマリンドウは春リンドウの仲間、オヤマリンドウは秋のリンドウです。何が起きたのでしょうか?
さて下山は、磐梯山の方を向いて下っていきます。
秋の爽やかな風を受け、紅葉と草紅葉を目にしつつ、ゆったりと下る道は山歩きの醍醐味を十分に味わえるものでした。
紅葉の最盛期はまだこれからです。あと1~2週間は楽しめそうです。
皆さんも十分の装備のもと、ぜひ、雄大でたおやかな山容・大展望・日本庭園の様な高層湿原の草紅葉が魅力の、秋の西大巓・西吾妻山を訪ねてみてください。
◇ターサン◇
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※裏磐梯はツキノワグマの生息域です。散策の際には、クマ鈴などでクマに人間の存在を知らせてあげてください。
また、近年、イノシシやサルも裏磐梯に生息し始めました。十分注意しましょう。
どちらも目撃したら、当センターにお知らせください。(電話:0241-32-2850)